病気の治療や予防に使用され、健康に影響を及ぼす医療機器では、品質がとても重要です。
特に、体内に入れて使うものが多い高度管理医療機器ではその影響は甚大で、生命の危険に直結する場合もあります。
そのような医療機器を安定した品質で製造するには製造環境がとても大切で、多くの場合クリーンルームでの製造が行われています。
本コラムでは、クリーンルームがどのようなものかや、クリーンルームのレベル、管理方法についてご説明します。
クリーンルームとは
クリーンルームとは、「空気中における浮遊微粒子や浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理されており、その空間に供給されるあらゆるものついても不純物、ゴミを取り除いてゴミを持ち込まないようにするための空間」のことです。
ここでいう微粒子とは、大きさが0.5µmの、肉眼では到底見えないような小さい粒子のことです。
このような微粒子を発生させないために、部屋の設計段階からの工夫や専用の設備が必要です。
フィルターの使用や気流制御、室内の圧を陽圧に保つなどといった方法が用いられます。
また、クリーンルームでは温度・湿度も一定に管理します。
温度や湿度が保たれていないと、製品品質に悪影響が及んだり、作業員が汗をかいて製品に付着するといったことも起きてしまいます。
クリーンルームのレベル
クリーンルームは清浄度の高さ別にクラス分類が設けられています。
基準として用いられているのは、USE Fed.Std.209E(アメリカ連邦規格)、ISO14644-1(国際標準化機構)、JIS(日本工業規格)、の3種類です。
現在、国際統一規格として用いられているのはISOで、FED規格は廃止されていますが、FEDは古くからある規格なため今でも慣習的に使われている場合が多いです。
FED規格では1立方フィート当たり(約30.5cm四方)に存在する0.5um以上の微粒子の数でクラス分けをしています。
FED規格での清浄度 | 0.5µm粒子数/f3 | ISO/JIS規格相当 |
---|---|---|
クラス 1 | 1 | ISO 3 |
クラス 10 | 10 | ISO 4 |
クラス 100 | 100 | ISO 5 |
クラス 1,000 | 1,000 | ISO 6 |
クラス 10,000 | 10,000 | ISO 7 |
クラス 100,000 | 100,000 | ISO 8 |
また、業種によって求められるクリーン度は異なります。
自動車部品工場や印刷工場などでは比較的低い清浄度のクリーンルームが使用されますが、ナノレベルでの加工が行われる半導体工場のようなところでは、非常に高いクリーン度が求められます。
業種 | 求められるクリーンレベル |
---|---|
半導体 | クラス 1~100 |
電子部品 | クラス 100~10,000 |
光学機器 | |
精密機械 | |
薬品 | クラス 100~100,000 |
食品 | |
印刷 | クラス 1,000~100,000 |
手術室 | |
自動車部品 |
クリーンルームの維持管理
クリーンルームの環境管理には、日々の使用ルールの運用や定期チェックなどが大切です。
クリーンルームにおける「4つの原則」についてご紹介します。
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- 持ち込まない
- クリーンルームに入室する際は、全身を覆うクリーンスーツと手袋を着用し、手洗い、粘着ローラー、粘着マットなどでごみを取り除いた上で、 エアシャワーを浴びて入室します。入室の手順は厳格に決まっており、作業員はこれを遵守しなければなりません。 また、クリーンルームに持ち込む道具や機材、材料などはパスボックスというエアシャワーが付いた二重扉の搬入口を通します。
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- 発生させない
- 大きな発塵源となるのは人です。まずはクリーンスーツを正しく着用することが大切です。
また、埃が発生しやすい部材はクリーンルームに持ち込むことはできません。
紙や布などは、すべてクリーンルーム用の特殊なものを使用します。
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- 堆積させない
- 定期的な清掃はもちろん、部屋を掃除しやすいレイアウトにし、ごみが堆積しにくいようにします。
床面は最も埃が堆積しやすい場所なので、製品などの床の直置きは避け、できるだけウエストライン(60cm)以上に置きます。
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- 除去する
- 不用品は速やかに除去し、必要なものだけを置くようにします。
排気経路を設け、気流により浮遊物を部屋外に排出します。発塵が多い場所では局所排気も有効です。
クリーンルームの清浄環境を維持するためには、これらの原則をルール化し、日々管理を行うことが重要です。
また、環境がきちんと保たれているかのチェックは、温湿度のモニターや、パーティクルカウンターによる空気中微粒子の計測などによって行われています。
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