クリーンルームとは?
構造やクラス・
使われている場所について解説

医療機器、医薬品、食品製造などの現場では、目に見えないほどの微細な塵や細菌が製品の品質を左右し、わずかな汚染でも企業の信頼を大きく損ねるリスクがあります。そのため、品質管理や衛生対策として使われるのが、クリーンルームです。 この記事では、クリーンルームの種類やクラス分けの基準、構造の違い、クリーンルームが使われている主な場所について解説します。

クリーンルームとは

クリーンルームとは、空気中の微粒子や微生物を制御し、清浄度や温湿度、静電気、圧力などの環境条件を一定水準以下に維持して、空間内を清浄に保った部屋のことです。
主に半導体や医療機器といった高い清浄環境が求められる製造現場で、品質管理や安全性向上用途で使われます。

クリーンルームの使用目的別の種類

クリーンルームには大きく分けて、工業製品の品質維持を目的とする「工業用クリーンルーム(インダストリアルクリーンルーム、ICR)」と、食品や医薬品などの衛生管理を目的とする「バイオロジカルクリーンルーム(BCR)」の2種類があります。
ICRでは、空気中の微細な塵やゴミ、さらに製品に悪影響を与える有害物質を取り除くため、高性能フィルタや静電気対策を用い、製造工程全体を保護します。ICRが活用されるのは、半導体や電子機器のように、わずかな異物であっても不良品の原因となる精密機器製造分野です。
一方、BCRは主に細菌やウイルスなどの微生物汚染を防ぐことを狙いとしており、食品工場や医薬品工場、バイオテクノロジー研究施設、医療機関などで広く用いられています。特に医薬品や医療機器製造の現場では、どれほど微小なものでも異物混入や汚染が発生すれば企業の信用失墜や大規模な製品回収につながるため、厳密な清浄管理が必須です。したがって、BCRでは塵埃だけでなく浮遊微生物の数も厳密に管理し、殺菌効果のあるフィルタやHEPAフィルタなどを導入して安全性を高めています。

クリーンルームのクラス

クリーンルームのクラスとは、空気中の微粒子数によって部屋の清浄度を分けた、清浄度規格のことです。数字が小さいほど微粒子が少なく、より厳格な環境が求められます。
かつてはアメリカ連邦規格(FED規格)が用いられ、「クラス100」「クラス1,000」といった呼び方で親しまれてきました。現在は国際統一規格であるISO規格(ISO14644-1)や、同等の算出方法を採用したJIS規格が主流です。 FED規格は1立方フィートあたりの粒径0.5μm以上の粒子数で判定し、クラス100なら「1立方フィート中に100個以下の粒子」を意味します。対して、ISO規格では1立方メートルあたりの粒径0.1μm以上の粒子数で等級を定め、「クラス5」「クラス6」といった表記を用います。
概算で、クラス5のクリーンルームは、FEDのクラス100に相当する清浄度です。
半導体工場のように微細な粒子が致命的な不良を引き起こす分野で使われるクリーンルームには、ISOクラス3~5など厳しいクラスが選ばれます。対して、主に汚染や微生物対策が中心となる医薬品や医療機器製造の現場では、ISOクラス5~8程度が選ばれるのが一般的です。
クラス表記が小さいほど厳格な管理・維持が必要で、クリーンルーム運用のコストも高くなります。自社でどこまでの清浄度が必要かを見極めた上で、適切なクラスを選定し、基準に合わせた運用・管理を行うことが、クリーンルームを最大限に活用するための鍵です。

クリーンルームの構造

クリーンルームは、HEPAフィルタやULPAフィルタなどの高性能エアフィルタとファンを一体化させた、ファンフィルタユニット(FFU)が天井に取り付けられた構造です。フィルタを通して清浄化した空気を室内に供給し、排気口から空気を外部に排出して、室内を陽圧に保ち、外部からの汚染を防ぎます。(医薬品製造や病院では陰圧にして、外部に空気を排出しない場合もあります。)
また、静電気の発生を防ぐ工夫や、床や壁にホコリがたまりにくい構造などが施されているため、室内で汚染が発生してもすぐに排出され、清浄な状態を維持可能です。
クリーンルームの気流管理の方式は、大きく分けると2種類が存在します。

一方向流方式

整流方式とも呼ばれる、天井全面や壁一面を高性能フィルタで覆い、空気を一定方向へ向けて均一に流す構造です。天井全体から床面へ、あるいは壁から反対側の壁へ、空気が一方向に流れるよう設計されるため、一方向流方式と呼ばれます。
室内で汚染があったとしても、汚染物質が気流に乗って速やかに押し出されるため、クラス5以下の高レベルの清浄度を得ることが可能です。しかし、一方向流方式を維持するには大量の空気を循環させる必要があるため、イニシャルコストやランニングコストは高くなります。また、レイアウト変更などで気流バランスが崩れやすいため、設備の設計や運用にあたっては注意が必要です。

非一方向流方式

非一方向流方式は、天井や壁の一部に設置した高性能フィルタから清浄空気を供給し、部屋の別の位置にある排気口から外へ空気を抜く構造のクリーンルームです。一方向流方式のように全体を一定方向で流すのではなく、室内の空気を入れ替えながら清浄度を保つ方式のため、乱流方式とも呼ばれます。
そのため、一方向流方式ほどの高い清浄度は実現しにくいデメリットがあります。対して、設備費や運用費が一方向流方式よりもコストダウンしやすい点はメリットです。
クラス6~8レベルのクリーンルームは非一方向流方式を採用している場合が多く、必要十分な清浄度を確保しながら、コスト面でもメリットを得やすい方式といえます。ただし、気流の渦が発生しやすい構造であるため、清浄度を保つにはレイアウトや製品配置には配慮が欠かせません。

クリーンルームが使われている場所

クリーンルームは、製品への異物混入や微生物汚染を防ぐため、さまざまな業種や施設で使用されています。以下では、クリーンルームが使われている代表的な場所について解説します。

医療機器・医薬品工場

医療機器や医薬品は、人の身体に直接使われる製品であるため、空気中に浮遊する微生物や塵埃を極力排除した環境で作られる必要があります。特に無菌製剤や滅菌医療機器を扱う場合、製造工程全体をクリーンルーム内で行うことも少なくありません。医療機器や医薬品製造現場のクリーンルームに求められる清浄度クラスは、ISOクラス5~8です。
国際的にも、医療機器や医薬品製造に対しては法規制が定められており、清浄度などの厳格な管理が求められます。そのため、医療機器や医薬品製造の現場では、定期的な検証を通じてクリーンルームの清浄性を維持しています。
高度管理医療機器の製造に欠かせないクリーンルーム Cleanroom

病院

医療現場でも、手術室や無菌病室などで微生物を含む空気が侵入しにくいクリーンルームは使われます。感染症を防ぐため、求められるクリーンルームの清浄度はISOクラス6~8です。
特に免疫力が著しく低下している患者を保護するための無菌病室は、感染症のリスクを減らす目的で、病室そのものが高性能フィルタを用いたクリーンルームとして設計されます。 また、患者だけでなく医師や看護師などの医療スタッフへの感染を防ぐため、最先端の手術室では微粒子の拡散を抑える気流設計が取り入れられたものも存在します。

化粧品工場

化粧品は直接肌に触れるため、微生物や異物の混入を極力抑えることが求められます。クリーンルーム内では空気中のホコリや細菌を除去し、製造工程を清潔な環境で進めることで、品質と安全性を確保できます。化粧品製造の現場で使われるクリーンルームの清浄度クラスは、ISOクラス6~8が一般的です。
化粧品の品質基準は年々厳しくなる傾向にあり、より高性能なフィルタや除塵・除菌設備を作業環境に導入している工場も増えています。消費者の衛生意識が高まる中、クリーンルームでの製造をアピールして安心感を提供できる点も製造工場にとってのメリットです。

食品工場

食品は口に入るものなので、髪の毛や金属片、虫など目に見える異物の混入や、微生物の発生による食中毒やカビ被害が起きると企業を揺るがす大問題に発展します。そのため、食品加工の現場ではクリーンルームを活用して空気を清浄化し、発生しうる汚染を最小限に抑えます。
食品工場のクリーンルームは、ISOクラス6~8の清浄度クラスを持つものが一般的です。

半導体工場

半導体の製造工程では、1マイクロメートル以下の極めて微細な回路パターンを形成します。微粒子がわずかに付着するだけでも不良品が生じるため、使われるクリーンルームの清浄度はISOクラス3~5と非常に厳しいレベルです。
設備コストは高くなりますが、不良率の低減や生産効率の向上に直結するため、クリーンルームは半導体製造にとって不可欠な存在です。

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