フィルムデバイスの活用事例

厚さ100μmほどのフィルム基材の上に電気的機能を付加したフィルムデバイスの最大の特徴は、薄くて柔軟なこと、また透明な電子部品を形成できることです。

情報機器や自動車、医療機器、産業機器など、さまざまな分野で活躍するフィルムデバイスを紹介します。

フィルムデバイスの活用事例

センシングデバイス

センサーは、フィルムデバイスが最も活躍している分野です。

なかでもスマートフォンや家庭用ゲーム機の画面に使用されているタッチパネルは、フィルムタイプのセンサーとして最も成功している例のひとつです。

抵抗膜方式、静電容量方式のタッチパネルにはITOなどの透明導電膜をパターニングしたフィルムセンサーが使用されています。

タッチパネルはもともとガラス基材上に形成されるのが一般的でしたが、フィルムを基材に使用したことで「割れない、軽い、薄い、曲げられる」といった新しい価値が提供されるようになりました。

NISSHAの静電容量方式タッチパネルの詳細はこちら

接触を検知するセンサーとしては、押圧を検知する圧力センサーや、摩擦力などを検知する3軸力覚センサーでも、フィルムタイプのセンサーが紹介されています。

圧力に応じて抵抗が変化する感圧材料や、ピエゾ素子のような特殊な感圧材料を使用する圧力センサー。Cu合金の配線の歪みを検出するひずみゲージ。また、タッチパネルで利用されている抵抗膜方式や静電容量方式を応用した力覚センサーなど。

フィルムタイプの力覚センサーの種類は使用目的に応じて多岐にわたります。印刷技術によってフィルム上にセンサー素子を形成した力覚センサーはロボットや車載製品などの電子機器への組み込みが容易にできることが特徴です。

また薄くて柔軟な特徴を活かしてウェアラブルデバイスへの応用も検討されています。

NISSHAのフォースセンサーの詳細はこちら

摩擦せん断センサーの詳細はこちら

Cu合金薄膜の電極は、温度センサーにも利用されます。また、最近は有機半導体をフィルム上にパターニングした光センサーも開発が進んでいます。

これらのセンサーデバイスは脈拍計や指紋認証デバイス、デジタルカメラなどの電子機器の薄型化、ウェアラブル化のコア技術として期待がされています。

機能部品

フィルム化されている電子部品はセンサー以外にも有ります。

ひとつはヒーターです。耐熱性のあるフィルム上にCuなどの配線を形成したフィルムヒーターは自動車や住宅の窓などの融雪や曇り止めの目的で広く普及しています。ヒーターに使用される導電材料は、Cuの微細配線かITO膜が一般的です。Cu配線は昇温速度が速いことが特徴です。ただし、近くで見ると配線が視認できてしまう欠点が有ります。

ITOヒーターは配線が見えるという問題は有りませんが、電気抵抗が高いために昇温に時間がかかる点に注意が必要です。

NISSHAでは昇温性と透明性に優れるフィルムヒーターを開発しています。詳細はこちら

フィルムアンテナも自動車用などで多く利用されているデバイスです。

ガラス窓などに貼り付けて使用されるのが一般的ですが、最近では樹脂成型品の中にフィルムアンテナを組み込む技術も開発されています。

インモールドエレクトロニクス(IME)と呼ばれる技術で、射出成形と同時にフィルムアンテナを成形品に融着します。

インモールドエレクトロニクスは情報機器や家電製品の省スペース化に貢献する技術です。また、最近、衣料品販売店などの自動精算機で使用されているRFIDにもフィルムアンテナが利用されています。

業務の効率化や労働力確保の難しさなどから、RFIDは今後さらに活躍の場を広げていきそうです。

NISSHAのインモールドエレクトロニクス(IME)の詳細はこちら

有機ELを利用したフレキシブルディスプレイの開発もフィルムデバイスが期待されている分野のひとつです。

ロールスクリーン型のディスプレイや、フィルム状のサイネージなどさまざまな用途での活用が考えられる技術です。

 

医療の分野でもフィルムデバイスは活躍しています。

血糖値センサーのセンサーストリップではカーボンなどの電極材料と反応酵素をPETフィルムの上にパターニングしたセンサーが使用されています。また、心電計や低周波治療器に使用されているゲル電極は、エラストマー状のフィルム基材の上に電極材料と吸着ゲルをコーティングしたものです。

さらに医療研究で使用されるマイクロ流体チップ(Lab-on-a-chip)では、血液などの検体からターゲット物質を抽出するためにITOやCu、Auなどでパターニングされたセンサー電極が利用されています。

電装部品としての期待

製品の軽量化、薄型化が進む中で、自動車のワイヤーハーネスのような電装ケーブルやフレキシブル基板を薄膜化、省スペース化したいというニーズは高まっています。

電装用の配線を薄いフィルム上に形成して外装部品に貼り付けることで、ケーブルを内蔵するスペースを不要にし、製品を軽量化する技術に期待が高まっています。

しかし、フィルムデバイスの電装部品への応用は電気特性や耐久性の面で開発途上です。

配線として機能するための低抵抗な導電材料とそのパターニング技術、さらには屋外使用などの過酷な環境に耐えるフィルム基材の開発が進められています。

活躍の場を広げるフィルムデバイス

IoTや5G技術など、情報技術が発展するなかでデバイスの軽量薄型化、ウェアラブル化はますます加速していきます。フィルムデバイスの技術は情報化社会を支えるコア技術として、その重要性を増しています。

NISSHAのフィルムデバイスへのアプローチ

独特のパターニング技術

  • 500mm幅の大面積フィルム上にパターニングするロールtoロールプロセス
  • フィルムの両面にセンサーパターンを形成できるフォトエッチングプロセス
  • 厚さ数百nm ~ 数十umのCu膜材料のパターニング加工

さまざまな納入形態に対応するモジュール加工技術

  • フィルムデバイスと成形品、ガラスカバーなどを一体化したモジュール提供
  • 用途に応じた適切なコントローラーICの選定

フィルムデバイス開発のさまざまなニーズにお応えします。詳細はこちら

関連記事

銅の成膜方法
電子部品の配線には、銅薄膜をパターニングしたものが多く使われています。この銅薄膜はフィルムなどの基材 ... もっと見る

銅の成膜方法

フィルム基材にも適用可能 ウエットエッチングによるパターニングの特徴を解説
プリント基板やフレキシブル基板(Flexible printed circuits、FPC)などを製 ... もっと見る

フィルム基材にも適用可能 ウエットエッチングによるパターニングの特徴を解説

ウエットエッチングとドライエッチングを比較 メリットやデメリット、用途に注目
エッチングは、プリント基板やフレキシブル基板(Flexible printed circuits、F ... もっと見る

ウエットエッチングとドライエッチングを比較 メリットやデメリット、用途に注目

エッチングできる金属材料の特徴と用途
エッチング加工とは、酸やアルカリの薬液によって素材表面を腐食除去することで、目的の形状を生成する加工 ... もっと見る

エッチングできる金属材料の特徴と用途

フィルムデバイス
人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説
5Gなどの通信技術の向上と共に、ロボットの遠隔操作のように「自分の体と同調させて操作をする」技術や、 ... もっと見る

人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説

温度センサーのカスタム生産に対応するNISSHAの薄膜金属加工技術
近年、さまざまな分野で温度センサーの必要性が高まっています。 例えば、燃料電池自動車に搭載されている ... もっと見る

温度センサーのカスタム生産に対応するNISSHAの薄膜金属加工技術

大型ひずみゲージの量産に対応可能 NISSHAのエッチング加工技術
ひずみゲージは民生分野から産業分野に至るさまざまなシーンで用いられています。構造物の強度試験や劣化診 ... もっと見る

大型ひずみゲージの量産に対応可能 NISSHAのエッチング加工技術

フィルムデバイス
センサー電極に使われる導電材料の種類、各材料の加工方法や用途をご紹介
センサーは、さまざまな物理現象、化学現象を電気などの信号に変換する部品です。たとえば、光に反応する光 ... もっと見る

センサー電極に使われる導電材料の種類、各材料の加工方法や用途をご紹介

フィルムデバイス
こんなことも可能!フォトレジストで製造できる微細な構造体をご紹介
フォトリソグラフィは、光(主に紫外線)を使用して基板上のCu薄膜などにパターンを形成する技術です。パ ... もっと見る

こんなことも可能!フォトレジストで製造できる微細な構造体をご紹介

透明デバイスを実現するための光学特性 透明性の向上方法について解説
現在、タッチパネルはスマートフォンや大型ディスプレイ、カーナビなど、日常生活に欠かせない製品の多くに ... もっと見る

透明デバイスを実現するための光学特性 透明性の向上方法について解説

フィルムデバイス
NISSHAのフィルムデバイス加工技術で実現する高い加工精度
フィルム基材の上にセンサーなどの電子部品を形成したフィルムデバイスは、現在多くの製品に採用されていま ... もっと見る

NISSHAのフィルムデバイス加工技術で実現する高い加工精度

AR
現実とデジタル情報を融合させるxR(xReality)技術は、近年、開発と実用化が進んできました。 ... もっと見る

開発と実用化が進むxR-仮想世界で活躍するインターフェース技術を紹介

薄い、軽い、曲げられる フィルムヒーターの特長を解説
Contents1 フィルムヒーターとは2 各種フィルムヒーターの特長2.1 電熱線ヒーター2.2 ... もっと見る

薄い、軽い、曲げられる フィルムヒーターの特長を解説

フィルムデバイス生産で活躍するフォトエッチング加工の基礎知識
Contents1 エッチング加工の基礎2 高い加工精度とハイスループット NISSHAのロール t ... もっと見る

フィルムデバイス生産で活躍するフォトエッチング加工の基礎知識

フィルムデバイスの基材となるベースフィルムの種類と特長
Contents1 ベースフィルムの役割2 ベースフィルムの種類と特長2.1 PET2.2 PC2 ... もっと見る

フィルムデバイスの基材となるベースフィルムの種類と特長

フィルムデバイスの量産技術 NISSHAのロール to ロール技術を紹介
Web検索からこの記事にたどり着かれた皆さんは「ロールtoロール」という言葉を既にご存知の方も多いで ... もっと見る

フィルムデバイスの量産技術 NISSHAのロール to ロール技術を紹介

光と電気を通す透明導電膜
Contents1 透明導電膜とは2 透明導電膜の種類2.1 〇 AgNW ( 銀ナノワイヤ )2 ... もっと見る

光と電気を通す透明導電膜

どのように選ぶ? フィルムデバイスの加工方法 
Contents1 フィルムデバイス加工技術の基礎2 パターニング エッチングプロセス、スクリーン印 ... もっと見る

どのように選ぶ? フィルムデバイスの加工方法 

NISSHAのOEM・受託開発
Contents1 お客さまの期待に応えるNISSHAのOEM・受託開発2 優れた品質と高い付加価値 ... もっと見る

NISSHAのOEM・受託開発

フィルムデバイスとは
Contents1 フィルムデバイスとは1.1 フィルムデバイスとフレキシブル基板の違い1.2 日常 ... もっと見る

フィルムデバイスとは

フィルムデバイス

見積り依頼/技術に関する相談

フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください

CLICK