協働ロボットとは?
特徴や産業用ロボットとの違いを解説

協働ロボットとは、人間と同じ空間で協働作業ができるロボットのことを指します。

消費者の趣味趣向は年々多様化し、製品のライフサイクルも短くなっています。こうした幅広いニーズに素早く応えるために、各種メーカーには「少量多品種生産」が求められています。
その一方で、近年の生産人口減少や若者の製造業離れにより、製造業界では人手不足が深刻化しています。

このような少量多品種生産、人手不足問題の解決策として注目が集まっているのが「協働ロボット」の活用です。

この記事では、従来から広く使われている産業用ロボットと協働ロボットの違いや、協働に向いているロボットの種類について解説します。
また、協働ロボットに活用できるNISSHAのフィルムセンサーについても紹介いたします。

「ロボットの作業精度を上げたい」、「ロボット内部の曲面や狭いスペースにセンサーを配置したい」などのお困りごとがございましたらぜひご相談ください。

協働ロボットとは

産業用ロボットの中でも注目を集めている「協働ロボット」とはどのようなロボットか、協働ロボットの特徴や需要が高まっている背景について解説します。

協働ロボットの特徴

協働ロボットの大きな特徴は、その名の通り「人と同じ空間で作業ができる(協働可能)」という点にあります。

従来の産業用ロボットは、作業者の安全を確保するために、作業するエリアを柵で囲み、ロボットの可動域と作業者の作業域を区分けするのが一般的でした。しかし、ロボットの制御技術や認識能力が発展したことにより、安全柵なしで配置可能な「協働ロボット」の実現が可能となりました。

協働ロボットの需要が高まっている背景

協働ロボットの需要はますます高まっています。その背景として、次の3点が考えられます。

1. 製品の多様化

現在は趣味趣向の多様化が進んでいます。これまでは画一的な仕様で済んでいた製品も、ラインナップの充実が求められる時代へと大きく変化してきています。
協働ロボットは、画像認識技術や対物センサーの発展により、従来のロボットよりも容易にティーチングが可能です。
また、ロボットでは対応できない作業を人間が協働で補うことで、対応可能な作業の幅を増やすことができます。そのため、少量多品種ラインでの協働ロボットの活用が期待されています。

2. 労働人口の不足

労働人口数の低下により、製造業界の人材不足は深刻化しています。従来作業者が担っていた領域を補うために、協働ロボットを活用する企業が増えてきています。

3. 法規制の緩和

従来は産業用ロボットに対して、一定範囲の危険エリアの定義や安全柵の設置が法律で規定されていました。
しかし、安全技術の進化によって人とロボットが協働可能となり、法規制も緩和されてきています。この緩和はロボット導入時のスペース・コスト低減につながり、協働ロボットの普及に大きな影響を与えています。

産業用ロボットと協働ロボットの違い

ここで、産業用ロボットと協働ロボットの違いについて安全性・ティーチング・制御の柔軟性の3つの観点で解説します。

  産業用ロボット 協働ロボット
安全柵の設置 必要 不要
設備の大きさ 大型 小型
作業範囲 ロボット単体で完結 作業者のサポート
繊細な作業
導入コスト
製造対象物 同品種の大量生産 多品種少量生産に対応

安全性

従来の産業用ロボットは、安全柵の中で駆動することが前提のため、作業者と干渉するようなことは考えられていません。ロボットの材質や駆動時の力も対人用に考慮されておらず、作業者が近づくのは危険な状態でした。

一方、協働ロボットは、作業者と一緒に駆動することを前提として設計されているため、作業者の安全を確保するための装置や機構が備えられています。例えば作業者の接近をセンサーが検知すると、作業速度を落とす・移動区域を制限する・作業を停止するなど、駆動範囲や速度を調整することが可能です。

このように、産業用ロボットと協働ロボットでは安全性に大きな差があります。

ティーチング

ティーチングとは、ロボットに必要な動作を教え込むことです。

従来の産業用ロボットは細かい動作のティーチングが難しく、時間がかかっていました。特に、多品種少量生産の場合には、品種ごとに段取りを変えるたびにティーチングが必要であり、効率的な生産ができません。

協働ロボットは、カメラでの画像認識システムや対物・触覚センサーを搭載しているため、自動でキャリブレーション(較正)を行うことが可能です。そのため、従来の産業用ロボットよりも動作の教え込みが容易です。

※キャリブレーション(較正):プログラムの座標位置を適切な箇所へ調整すること

また、協働ロボットは力制御も可能なため、駆動力の調整のみであればわざわざティーチングする必要がなくなる場合もあります。

制御の柔軟性

従来の産業用ロボットは、搭載しているセンサーの数も少なく、ティーチングによって教え込まれた位置制御が中心でした。
形状の異なる製品など、少しのずれにも対応できずうまく動けないことがありました。

協働ロボットでは、位置制御に加えて力制御を行うことも可能です。
柔軟な制御が構築されており、製品のばらつきや多品種少量生産にも対応できます。また、多くのセンサーが搭載されている場合には、繊細な作業にも対応しています。

協働ロボットに向いているロボットの種類

産業用ロボットは主に、以下の4種類に分類できます。

  • 垂直多関節ロボット
  • 水平多関節ロボット
  • パラレルリンクロボット
  • 直交ロボット

この中でも協働ロボットとして多く使われているのは、ロボットハンドに代表される「垂直多関節ロボット」です。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、力制御を搭載したロボットハンドなどの活用により、人と同程度の精度で作業を行うことが可能です。また、関節を折り曲げることで狭い面積にも設置できます。

このように、従来人間が行う作業を代替でき、なおかつ限られたスペースに設置可能というメリットから多くの場面で活用されています。

協働ロボットの作業精度を高めるには

以上のように、多くのメリットを持つ協働ロボットは今後も機能や精度の向上が期待されています。

ロボットの作業精度を高めるために重要なもののひとつが、指先に搭載する「力覚センサー」です。
例えば、対象物にかかる圧力や摩擦力などの詳細な情報を知ることができれば、それを基により繊細な作業が可能となります。

しかし、一般的な力覚センサーでは「センサーが厚く、狭いスペースや曲面に対応できない」 「多点に加わる力の計測が難しい」といった課題がありました。

そこで、これらの課題を解決するために開発されているのがフィルム型の力覚センサーです。
フィルム型の力覚センサーであれば、さまざまな形状に柔軟に対応し、省スペースを実現します。また、面での計測が可能なため多点での力を検出できます。

NISSHAのフィルム型力覚センサー

NISSHAでは、フィルム型の力覚センサーを開発しています。
 
特徴

  • 表面に生じる圧力と摩擦力を多点的、多軸的に検出可能
  • 厚さはわずか1mm以下、狭いスペースや曲面への搭載も対応

 
従来は3軸の力覚センサーとすべり覚センサーを組み合わせて使うような状況でも、NISSHAのフィルム型力覚センサーでは単体で実現できる可能性があります。

製造業を中心に需要が高まっていくと想定される協働ロボットの精度を高めるために、NISSHAのフィルム型力覚センサーは効果的なアイテムといえます。フィルム型力覚センサーに興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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