フォースプレートを補完するシート状3分力測定システムの提案
軽量・柔軟・簡単に持ち運び可能

フォースプレートを用いた床反力の測定は、スポーツ科学やリハビリテーションの分野で30年以上前から用いられてきました。
疾走能力1つとっても、走技術との関連性を評価するためには床反力を含めたバイオニクス的な評価・分析が必要です。

本記事では、フォースプレートの課題を解決する新たな提案として、シート状センサーについて紹介します。

フォースプレートの仕組みと構造

フォースプレートは、人と地面の間にはたらく上下、左右、前後方向の力(=床反力)を測定できる装置です。フォースプレートで測定したデータで、3軸方向の力とモーメントや足圧中心(COP)が分かります。

大きく分けて測定ユニットとAD変換ユニット、演算ユニットから成り立っており、それぞれが有線または無線で繋がれています。特に測定ユニットを「フォースプレート」と呼んでいます。すべて測定ユニットに内蔵されている製品もあります。

平坦な形状で、外装にはアルミ合金などが使われています。大きさは150mm× 150mmから1200mm× 600mm、重量は可搬型で10kg前後、設置型で最大150kgと幅広く、用途に応じて設置型(埋め込み型)と可搬型から選択します。

フォースプレート裏面には、受けた力の大きさを電気信号に変換するためのロードセルが四隅に設置されています。歪みゲージ型のロードセルが多いですが、より微弱な変化を捉えるために水晶ピエゾ式を採用している製品もあります。

床反力の基礎

人の動作や運動と、フォースプレートで測定できる床反力の関連性について簡単に解説します。

床反力とは

動作・運動中、人に加わる外力は、重力と床反力に分けられます。人間を剛体とみなしたとき、地面で静止した状態における垂直抗力が床反力です。重力は体重と重力加速度によって決まりますが、床反力は人間の動作・運動に伴って変化します。

床反力と人の動作の関係

人が静止状態から歩き出すとき、まず片方の足を少し曲げます。床反力の作用点は、曲げた後ろ足にずれます。
片足を曲げたことで身体は重力に引かれて前方に少し傾くため、前足に力が入り床反力ベクトルも前方に傾きます。そこで水平成分の床反力が増えて身体を前に押すことになるので、人は歩き始められることが可能となります。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

関節モーメント

身体を動かそうとして力を入れたときに関節にかかる力を関節モーメントと呼びます。力のモーメントとは、物を回転させようとする力のはたらきのことです。厳密には、関節にかかるモーメントには関節を回転させようとする外力が生み出す外部モーメントと、外部モーメントに拮抗しようとして身体内部ではたらく内部モーメントがありますが、一般に関節モーメントといえば内部モーメントを指します。他にも関節トルク、筋トルクとも呼ばれています。

力のモーメントは、かかる力の大きさと、力の作用点から回転軸までの距離で決まります。ランニング中の身体の動きでいえば、上肢の重心を回転運動の支点である肩関節に近づけた方が、関節モーメントが小さくなり、腕を振りやすくなります。

動作時に関節にかかる負荷を最小限に抑えた製品設計や、パフォーマンス向上に直結するトレーニング法開発では、動作中の関節モーメントを解析しています。

フォースプレートの活用

フォースプレートで測定した床反力のデータを、パフォーマンスの向上や怪我防止に活用している事例をいくつかご紹介します。

スポーツにおけるデータ分析

運動中の重心と関節モーメントの測定によって、優れたプレー分析や、バイオニクス的に最適なトレーニングもできるようになると期待がされています。
例えば近年の研究結果では、剣道競技中の打突動作に着目し、優秀な選手は踏み込み足と蹴り足では、踏み込み足がより高い力を発揮しているとの報告がなされました。

歩行・運動時の動作解析

フォースプレートによる床反力の測定結果は、運動中の動作解析や怪我予防にも活用されています。

フォースプレートを用いた実験結果によると、トレーニング用に開発されたソールが前後に湾曲した形状のソールは通常の平らなソール形状に比べて推進力を低下させることが示唆されています。
このように、フォースプレートは様々な分野で活用されていますが、従来のフォースプレートにはいくつかの課題があります。次の章では、これらの課題について詳しく見ていきます。

フォースプレートの課題

フォースプレートには、測定範囲や設置、運用面での課題が存在します。これらの課題は、日常動作、スポーツ動作の解析や研究において測定可能な場面を限定してしまう要因となっていました。

平坦でしか測定できない

フォースプレートはアルミ合金などの硬い材料が使われ、平坦な測定面を想定しております。ところが実際の生活環境には階段や坂道があり、材質も様々です。高齢者の転倒予防や、下肢の怪我からの復帰プロセスで日常動作における転倒リスクを評価するのであれば、こういった歩きにくい場面も想定しなくてはなりません。

また、アウトドアスポーツの分野でも、山道や凸凹道での動作解析は必須です。トレイルランニングやハイキング、オリエンテーリングでは、不整地での動作が中心となります。専用のシューズ開発は平坦面のデータだけでは難しいでしょう。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

サイズ・形状が固定されている

フォースプレートは、四隅にロードセルが配置された長方形や正方形の設計が一般的です。ところが、特定のスポーツ動作の詳細な解析には、動作の特性に合わせた形状のフォースプレートが必要となる可能性があります。研究・開発対象に合わせ、ニーズに合わせた形状のフォースプレートを選択すべきだと言えるでしょう。

例えば、陸上競技の短距離走やハードル走のスタート動作、体操競技の着地動作、格闘技における打撃動作の床反力測定に特殊な形状のフォースプレートを使用すれば、より正確な力の伝達を測定できるかもしれません。

プレートが重い

頑丈な構造が必要なフォースプレートでは、運搬可能な比較的軽量なモデルでも10キロ近い重さがあります。フォースプレート測定専用のスペースを確保できる場合は埋め込み型のモデルを選ぶこともできますが、設置には労力とコストがかかります。

より幅広い環境で自由動の高い動作解析を可能にするためには、革新的な床反力測定装置が必要です。

関連資料

3軸力覚の面内分布測定

摩擦・せん断力センサーの
製品カタログ/用途別事例集

▶︎ 資料をダウンロードする

NISSHAの「摩擦・せん断力センサー」の提案

※ 本製品は医療機器ではありません

◾️測定における摩擦・せん断力センサーの利点
摩擦・せん断力センサーを用いることによる利点をご紹介します。フォースプレートでは測定が難しいシーンでの利用や、フォースプレートと組み合わせることで解析の幅が広がることが期待できます。
3軸の力の分布を測定
足裏にかかる圧力(Z)とせん断力(XY)の面内分布を測定することができます。これにより足裏にかかる部分的な力の強弱を把握することができ、よりきめの細かい指示(リハビリテーションやコーチング)に繋がる可能性があります。

その場ですぐ測定可能、シート状で持ち運びが容易
センサー部分はフィルムシート状のため、曲げることができ軽くて持ち運びが便利です。またセンサー部は≦2mmと薄く、床に埋め込まず置くだけでも大きな段差は生じません。そのため、設置場所の確保が難しい室内でのリハビリテーションやトレーニングなどにもご検討いただけます。

ご興味を持っていただけた方は、まずは一度お気軽にご相談ください。

6軸力覚センサーが採用されるロボットの種類

関連記事

足圧中心(COP)の測定方法と活用|シューズ開発・競技データ分析
足圧中心とは、足裏と接地面の間に作用する床反力の作用点のことです。足底圧中心やCOP(Center ... もっと見る

足圧中心(COP)の測定方法と活用|シューズ開発・競技データ分析

ロボットアームに役立つ6軸力覚センサー特徴や3軸との比較を解説
製造業界では、人手不足や生産効率向上の観点から、今まで人間が担っていた手作業をロボットアームに代替さ ... もっと見る

ロボットアームに役立つ6軸力覚センサー特徴や3軸との比較を解説

モーメントセンサーとしての摩擦・せん断力センサーの活用
モーメントとは、ある点を中心に物体を回転させるはたらきの大きさのことを指します。 「力の大きさ」×「 ... もっと見る

モーメントセンサーとしての摩擦・せん断力センサーの活用

ロボットの滑り覚測定に活用できるNISSHAの摩擦・せん断センサー
滑り覚とは、物体同士の位置変化が生じる際の速度や量を表します。滑り覚の研究は、ロボット開発の分野で重 ... もっと見る

ロボットの滑り覚測定に活用できるNISSHAの摩擦・せん断センサー

把持力とは?把持力測定を活用した研究開発事例を紹介
NISSHAでは、把持力の測定に活用できる摩擦・せん断力センサーを開発しています。この記事では、把持 ... もっと見る

把持力とは?把持力測定を活用した研究開発事例を紹介

協働ロボットとは?特徴や産業用ロボットとの違いを解説
協働ロボットとは、人間と同じ空間で協働作業ができるロボットのことを指します。 消費者の趣味趣向は年々 ... もっと見る

協働ロボットとは?特徴や産業用ロボットとの違いを解説

バラ積みピッキングの自動化に貢献できるNISSHAの摩擦せん断力センサー
生産効率を上げる上で欠かせない自動化工程の一つとして、製品のピッキング作業が挙げられます。特に、バラ ... もっと見る

バラ積みピッキングの自動化に貢献できるNISSHAの摩擦せん断力センサー

触覚のメカニズムとは?圧力や凹凸、温度を感じる仕組みを解説
「触覚」はその名のとおり、ものを「触った」際に生じる感覚です。 水を触ったときに冷たさを感じたり、針 ... もっと見る

触覚のメカニズムとは?圧力や凹凸、温度を感じる仕組みを解説

座圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~
座圧測定をする際には、一般的に垂直方向の力を測定できるセンサーを使用します。一方で、NISSHAは座 ... もっと見る

座圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~

足圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~
NISSHAの開発している摩擦・せん断力センサーは足圧の測定に活用できます。一般的に足圧を測定する際 ... もっと見る

足圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~

急速に開発が進むソフトロボティクス 取り組み事例や課題を解説
「ロボット」と聞くと硬い金属でできたイメージを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。 硬い材質の ... もっと見る

急速に開発が進むソフトロボティクス 取り組み事例や課題を解説

カメラを活用したロボットハンド制御 メリットデメリットを解説
産業用ロボットや搬送用ロボットなど、製品を取り扱うロボットには必ずと言っていいほど「ロボットハンド」 ... もっと見る

カメラを活用したロボットハンド制御 メリットデメリットを解説

人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説
5Gなどの通信技術の向上と共に、ロボットの遠隔操作のように「自分の体と同調させて操作をする」技術や、 ... もっと見る

人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説

遠隔操作、自動化できる工程を触覚センサーによって拡大可能に
ロボットの遠隔操作技術の進歩によって、これまで人間がやっていた作業をロボットが実施できるようになって ... もっと見る

遠隔操作、自動化できる工程を触覚センサーによって拡大可能に

摩擦・せん断力センサーを応用した入力インターフェース
NISSHAの摩擦・せん断力センサーは、「ねじる、こする、弾く」などの多様な入力を可能にする力覚検知 ... もっと見る

摩擦・せん断力センサーを応用した入力インターフェース

ロボットハンドに使われるセンサーとは? トルクセンサーなど代表的な力覚、触覚センサーを解説
指先を使って作業をするとき、人間はさまざまな感覚を使いながら動きをコントロールしています。同じような ... もっと見る

ロボットハンドに使われるセンサーとは? トルクセンサーなど代表的な力覚、触覚センサーを解説

正確な力を測るのに欠かせない! 力覚センサーに求められる特性や種類を解説!
力覚センサーは複合的に作用している力の状態を計測できるセンサーです。臨機応変な対応が求められる高度な ... もっと見る

正確な力を測るのに欠かせない! 力覚センサーに求められる特性や種類を解説!

ロボットの進化に必須! 触覚センサーの種類と原理を解説
工場などで使われている従来のロボットには、あらかじめ決められた動きやルールに従って動作する位置制御が ... もっと見る

ロボットの進化に必須! 触覚センサーの種類と原理を解説

タクタイルとは? 心地いい使用感や直感的な操作にかかせない性質
私たちの身の回りには多くの入力インターフェース(機械と人間とをつなぐ接点)があります。これらを操作す ... もっと見る

タクタイルとは? 心地いい使用感や直感的な操作にかかせない性質

摩擦力、せん断力の面内分布を測定可能!さまざまな製品の研究開発に応用できます
製造業の研究開発部門では、摩擦力、せん断力を測定したいというニーズがあります。ロードセルのように、1 ... もっと見る

摩擦力、せん断力の面内分布を測定可能!さまざまな製品の研究開発に応用できます

ロボットハンドの種類と特徴を解説、さらなる高性能化を考察
ロボットは生産、加工現場だけでなく、医療、福祉などさまざまな場面で活用されています。ロボットに求める ... もっと見る

ロボットハンドの種類と特徴を解説、さらなる高性能化を考察

面圧の測定方法とセンシングデバイスを紹介
製造業の研究、開発現場ではさまざまな特性値を測定して、技術ノウハウを蓄積しています。面圧は、摩擦力を ... もっと見る

面圧の測定方法とセンシングデバイスを紹介

注目される食品工場でのロボット利用 活用事例と導入課題の解決策を解説
食品工場では、少子高齢化の進行による人手不足対策や生産性向上、作業者の負担軽減を目的として、ロボット ... もっと見る

注目される食品工場でのロボット利用 活用事例と導入課題の解決策を解説

開発と実用化が進むxR-仮想世界で活躍するインターフェース技術を紹介
現実とデジタル情報を融合させるxR(xReality)技術は、近年、開発と実用化が進んできました。 ... もっと見る

開発と実用化が進むxR-仮想世界で活躍するインターフェース技術を紹介

摩擦力・せん断力とは-NISSHAの摩擦・せん断力センサー技術
物体と物体が接触して動く際、その接触面には摩擦力が生じます。ネジ、ベアリング、衣服、靴、オイル……。 ... もっと見る

摩擦力・せん断力とは-NISSHAの摩擦・せん断力センサー技術

ユーザーインターフェースとは ―入力装置の今とこれからをまとめてみる
人が機械との間で情報伝達を行うユーザーインターフェースには、マウスやキーボードなど様々な種類がありま ... もっと見る

ユーザーインターフェースとは ―入力装置の今とこれからをまとめてみる

ロボットに新たな感覚を付与する、NISSHAの触覚センサー
指で押し込んだ時に感じる物の弾力。手を横に滑らせたときに感じる、ひっかかるようなザラザラとした表面の ... もっと見る

ロボットに新たな感覚を付与する、NISSHAの触覚センサー

見積り依頼/技術に関する相談

フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください

CLICK