ロボットの進化に必須! 触覚センサーの種類と原理を解説

工場などで使われている従来のロボットには、あらかじめ決められた動きやルールに従って動作する位置制御が多く用いられています。しかし位置制御は想定外の状況に対応することが難しく、多種多様な製品を臨機応変に扱うような用途には向いていません。

そこで様々な状況への対応を可能にする触覚センサーが登場しました。触覚センサーは人間の手などに備わっている触覚が感じとる情報を検出し、電気信号に変換する部品です。物を掴んだ状態や表面の質感、距離などもリアルタイムに感じとることができます。従来のロボットでは難しかった臨機応変さが求められる作業や、多種多様な製品を確実に掴む動作ができるようになります。

触覚センサーは大別して力覚センサー、すべり覚センサー、近接覚センサーにわけられ、その中にも様々な種類があります。今回は代表的な触覚センサーとそれぞれの検出原理を解説します。

力覚センサー

力覚センサーとは

力覚センサーは力(圧力)やトルクの大きさ、向きを検出することのできるセンサーです。触覚センサーの基本となるもので、ロボットハンドで物を掴んでいる状態を検出したりロボットが行っている作業の状況を把握したりすることができます。ここからは、さまざまな方式の力覚センサーを紹介します。

電気抵抗式

力が加わった際に一定の関係で電気抵抗値が変化する物体を用いて力の大きさを検出する方式です。ひずみゲージを用いたロードセルが代表例です。抵抗値の変化は非常に微小ですが、アンプで増幅して比較的大きな電圧変化に変換し読み取ります。ロードセルは単軸方向の力の大きさのみ検出できますが、近年では3軸方向とその軸回りのトルクも測ることのできる6軸力覚センサーなどが利用されています。

ひずみゲージ以外では感圧導電性ゴムを使う方法があります。基材であるゴムの中に導電材を分散させた構造で、力によって変形するようになっています。変形すると導電材同士の接触量が増し、電気抵抗値も変化するため力の大きさを求めることができます。いずれの方法も回路構成やセンサー構造が簡単で耐久性も高くできます。

静電容量式

力によって静電容量が一定の関係で変化する構造を利用し、力の大きさを検出する方式です。原理は電子部品のコンデンサーと同じです。2つの平行に対面させた導電体間に電圧を加えると電荷が蓄えられます。電荷が蓄えられる量を静電容量とよびます。静電容量は導電体同士の距離によって変化します。力の大きさに応じて導電体の距離が変わる構造を設けることで、静電容量の変化から力の大きさを求めることができます。電気抵抗式と同様に構造が簡単で小型化や多点化、多軸化が可能です。

 

圧電式

力が加わった際に電圧を発生させる圧電素子を用いて、力の大きさを検出する方式です。水晶やPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)などの物質は圧力を加えることで電気分極が発生し、表面に電圧が生じる圧電効果を持っています。

その特性をセンサーに応用し、力によって発生した電圧の高さを計測することで力の大きさを求めることができます。

ほかのセンサーと比べ高い剛性を持ちながら、高感度を両立させることができるのが特徴です。

 

光学式

力が加わる箇所に模様をプリントしておき、力による模様の変化を光学センサーで検出して力の大きさを求める方式です。事前にどのような力が加わると模様がどう変化するのか、関係性を明らかにしておく必要があります。ほかの方式と比べセンサー内部に複雑な回路が不要で、耐環境性が高いことが特徴です。

すべり覚センサー

すべり覚センサーとは

すべり覚センサーは物とセンサー間のすべり速度や量を検出することのできるセンサーです。ロボットハンドなどで掴んでいた物体を落としそうになるとき、すべり覚センサーですべりを検知したら掴む力を強くするなどの対処を行うことができます。ここからは、さまざまな方式のすべり覚センサーを紹介します。

 

変位検出式

ロボットハンドなど物を掴む箇所にローラーやボールを備え、その回転量からすべり量を検出する方式です。掴んでいるものがすべり落ちそうになった場合、本来止まっているはずのローラーやボールが物の表面との摩擦で回転するためすべりが検知できます。すべりをダイレクトに検出できますが限られた範囲にローラーやボール、さらに回転の検出機構を設ける必要があるため、搭載性に劣ります。

 

光学式

ロボットハンドなど物を掴む箇所に光学式センサーを備え、物体表面の状態変化を光学的に検知しすべりを検出する方式です。原理としては光学式マウスのセンサーと同じです。すべりを直接的に検出でき変位検出式よりも搭載性はいいですが、それでも制限はあります。

 

微振動、高周波検出式

掴んでいる物がすべりだす直前に発生する特有の微振動を検知し、すべりを検出する方式です。ロボットハンドなどの近くに振動を検知できる加速度センサーなどを備えています。変位検出式や光学式のような搭載性の制限は少ないです。しかしすべりをダイレクトに検出するものではないため、掴む物の表面状態が大きく変わると検出が難しくなります。

 

負荷変化検出式

力覚センサーから得られた負荷の状態をモニタリングし、すべり検出アルゴリズムによってすべりを検出する方式です。ロボットハンドの手首や腕に備えられているロボット全体の制御を行うための力覚センサーを利用します。すべりが発生すると負荷が急速に減少するなどの特有の応答を示します。この応答をソフトウェアで検出しすべりの発生判定を行います。他の方式とは異なりすべりを検出するためのセンサーは不要であるメリットがありますが、ダイレクトに検出するものではないため掴んでいる物の表面状態などに影響を受けます。

近接覚センサー

近接覚センサーとは

近接覚センサーはセンサーと物体表面との比較的近い距離を検出することのできるセンサーです。ロボットが物体に触れる前に使われることが多いため、厳密には触覚センサーではありません。しかし人間のような優れた視覚を持たないロボットを補助する広義の触覚センサーといえます。ここからは、さまざまな方式の近接覚センサーを紹介します。

光反射式

物体に対して光を照射し、その反射光の受光強度や往復時間を求めて距離を検出する方式です。応答性に優れコンパクトなため搭載性もいいですが、物体表面の状態や外乱の影響を受けることがあります。一般的な方式で広く利用されています。

 

超音波反射式

物体に対して超音波を発射し、その往復時間を求めて距離を検出する方式です。表面状態に左右されにくく透明体などの光反射式が使えない物体に対しても有効です。一般的な方式で光反射方式と並び広く利用されています。

 

静電容量式

物体の接近を検知したい範囲に電界を発生させ、その変化を見ることで距離を検出する方式です。電界内に物が入ると静電容量が変化します。静電容量の変化量と距離の関係をあらかじめ求めておくことで距離が検出できます。様々な物の検出ができますが、物の大きさや材質によって検出距離や感度が異なるため注意が必要です。

NISSHAの触覚センサーの魅力

ロボットに利用される触覚センサーの代表的なものを見てきましたが、いずれも長所、短所があります。なかでもロボットハンドの手指など、限られた空間に多数のセンサーを備えることは大きな課題でした。

一方NISSHAの触覚センサーは、フィルム状のセンサー表面に生じる力(圧力)と摩擦力を多点的、多軸的に検出できます。

このため、従来3軸力覚センサーと滑り覚センサーがそれぞれ受け持っていた機能を、このセンサーひとつで実現することができます。フィルムの厚さは1mm以下で簡単に変形させることもできるため搭載性にも優れます。またロボットハンドの手指などの小さな曲面形状をもった自由表面にもフレキシブルに追従させながら、貼り付けて使うこともできます。従来のセンサーでは難しかった課題を解決できる方式として、今後の幅広い活用が期待されています。

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