ロボットハンドの種類と特徴を解説
さらなる高性能化を考察

ロボットは生産、加工現場だけでなく、医療、福祉などさまざまな場面で活用されています。ロボットに求める機能のうち、物をつかむ、持ち上げるという動きはとても重要です。物をつかむことを把持といい、ロボットハンドの構造によって把持性能が異なります。

今回はロボットハンドについて、主な種類と特徴、そして摩擦力、せん断力センサーを使ってさらに高性能にする可能性を紹介します。

ロボットハンドとは、ロボットアームの先端に取り付けられた手のような役割をする機構です。一口にハンドと言っても、人間の手のように5本指があるものや、空気などで吸着するための吸気口が備わっているもの、UFOキャッチャーのようなアームがついているものなどさまざまな種類があります。ロボットハンドはプログラムによって制御されており、直線移動、回転、傾け、破壊などの動作が可能です。

ロボットハンドの活用例

ロボットハンドは対象物を別の場所に移動させる機能があります。工場の物流工程や加工工程では、ロボットハンドが対象物を次の工程に運んだり製品に載せたりします。また、部品の組み立てや組み付け作業、または補助をすることもあります。

医療の分野では、ロボットハンドは手術の補助に活用されています。人の手では細かな作業をするときにどうしても手ブレが発生する可能性がありますが、ロボットは正確かつ精密に動作するので、手術の質を向上するのに役立ちます。

ロボットを活用するメリット

ロボットを活用するメリットはさまざまあります。主なメリットを紹介します。

人件費削減
筐体への部品セットなど、これまで人がやっていた作業をロボットに置き換え可能です。人件費や経費を削減できます。

生産量アップ
ロボットは疲れることがないため、24時間稼働できます。作業時間が長くなり生産量を増やせるでしょう。

時間生産性、効率アップ
ロボットが重い部品を筐体にセットして、人が固定のためのネジ締めをするなど、役割を分担しながら協働することで、作業効率があがります。

品質アップ
ヒューマンエラーによる作業ミスをなくし、品質のばらつきを少なくできます。

工程の立ち上げが早い
ロボットはプログラムセットさえすればすぐに動かせるため、早く工程を立ち上げることができます。一方、人の場合は採用やトレーニングなどに時間がかかります。

関連資料

3軸力覚の面内分布測定

摩擦・せん断力センサーの
製品カタログ/用途別事例集

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ロボットハンドの種類と特徴

ロボットハンドにはいくつか種類があります。それぞれの特徴を紹介します。

挟んで持つ

挟んで持つタイプのロボットハンドは把持ハンドといいます。指の数はさまざまで、2本であったり、多いときは4本以上あったりします。関節部に設置されたモーターなどが、ロボットハンドの指を動かします。また、関節部に6軸力覚センサーなどを設置し指先の摩擦力や圧力を推定します。これによって把持力の制御を行っています。

把持ハンドは、対象物をつかんで同じ動作を繰り返す場合に向いているので、大ロットの生産工程でよく使われています。

デメリットは、機構が少し複雑になりコストが高い点です。

空気で吸引する

吸引タイプのロボットハンドは、空気を吸い込んで対象を吸着して持ち上げることができます。真空吸着ともいい、真空状態を作り出すことで吸着する仕組みです。

吸引タイプのロボットハンドは、空気で吸い込むので機構が単純です。大きな鋼板などであっても吸着できれば運ぶことができます。また、対象物とロボットハンドが擦れることがないため、傷がつきにくいです。

一方で、対象物に水や油が付着していると吸着しきれずに落としてしまう場合があります。また、対象物に凹凸や穴があると空気が抜けてしまい吸着できません。

吸引タイプのロボットハンドは、真空発生器やコンプレッサーなどが必要なので装置全体が大きくなる場合が多いでしょう。

 

磁力で引き付ける

マグネットグリッパーという、磁力で引き付けるロボットハンドもあります。磁石は電磁石を使っており、流す電流のONとOFFを切り替えて持ち上げと離す動作を制御しています。

マグネットグリッパーは、機構が単純で設計しやすく、真空吸着できないような穴や、凹凸がある形状も持ち上げられます。

デメリットは、非鉄金属を持ち上げられないことや、磁石の仕様を超える重量の対象物は持てないことです。

 

クーロン力(静電気力)で引き付ける

クーロン力で持ち上げるロボットハンドは、電極に電圧をかけて対象物との間に電位差を作って引き付けます。

プラスチックフィルムや通気性のある繊維などを吸着する場合に適しています。また、真空環境であってもクーロン力は発生するので、半導体の製造工程で基板を搬送する場合によく使われます。

NISSHAの摩擦力、せん断力センサーでロボットハンドをさらに高性能に

摩擦力、せん断力センサーでできること

NISSHAの摩擦力、せん断力センサーは厚さ1㎜以下のシートタイプのセンサーです。シート面積や形状のカスタマイズも可能で、曲面への貼り付けもできます。そのため、把持ハンドに荷重センサーとして使用できます。

X,Y,Zの3方向の荷重とその分布を測定可能で、摩擦力、せん断力、面圧を数値化できます。センサーシートの表面にゴムシートなどを貼り合わせることも可能なので、把持するグリップ力、対象物との摩擦係数を最適化できます。

摩擦力、せん断力センサーをロボットハンドに応用するメリット

対象物を壊さない

ロボットハンドの表面にNISSHAの摩擦力、せん断力センサーを適用すると、直接対象物にかかっている荷重を測定できます。そのため、対象物を壊さない程度の最適な把持力をかけることができます。

対象物をカメラで認識してつかむ制御の場合、対象物にかかっている荷重を測定できないため最適な把持力の推定が難しいです。

ほかには、関節の駆動部にトルクセンサーを設置して、トルクから対象物にかかる力を推定して制御する方法があります。しかし、直接対象物にかかっている荷重を測定するほうが、より正確で高精度な制御が可能になるでしょう。

 

対象物を落とさない

NISSHAの摩擦力、せん断力センサーは、分布や荷重のリアルタイムの変化を検知できるため、落ちそうになるときの荷重の位置のずれや摩擦力の変化を測定可能です。そのため、高精度な把持力の制御が可能となります。

例えば、対象物がロボットハンド表面をすべるときの位置の変化を検知したら把持力を強くして、位置の変化が止まったら把持力を一定にするなどの制御が可能となります。

 

まとめ

主なロボットハンドの種類と特徴を紹介しました。NISSHAの摩擦力、せん断力センサーを把持ハンドに適用することで高精度な制御が可能となり、多様な対象物を正確に取り扱いできる可能性があります。興味を持っていただいた方はぜひご相談ください。

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