足圧中心(COP)の測定方法と活用
シューズ開発・競技データ分析

足圧中心とは、足裏と接地面の間に作用する床反力の作用点のことです。足底圧中心やCOP(Center Of Pressure)とも呼ばれています。

人が立っているときに地面から受ける鉛直・前後・左右方向の力(=床反力)をベクトルで示すとします。床反力の合成ベクトルと足裏の交点が、足圧中心です。

足圧中心の軌跡は、身体重心(Center Of Mass:COM)の軌跡を床面に投影したものに近いですが、完全に一致するわけではありません。
三次元動作解析装置を用いて高齢者の体節ごとの静止立位制御を調べた実験によると、頭部、骨盤部の重心の動きと足圧中心の動きは一致していないという結果が見られています。

足圧中心(COP)の測定

足圧中心の測定結果は、運動学・スポーツ科学、生体医工学、理学療法学で活用されています。足圧中心は、立位や歩行中に刻々と変化します。立位では足の中心付近に位置し、歩行時には踵から足先に向かって移動します。足圧中心の座標点の測定自体が目的となることは少なく、足圧中心の変化を測定します。

足圧中心の変位をもとに身体の動的なバランス制御のメカニズムを理解でき、バランス能力の向上やスポーツパフォーマンスの改善に役立てられます。

スポーツ選手の足圧中心の軌跡を分析すれば、パフォーマンスに影響する動作の癖を特定し、改善につなげられます。

測定の目的

足圧中心測定データを活用した製品開発の事例を2つ紹介します。

歩行関連製品への応用

歩行・運動状態の測定と分析結果は、リハビリテーション機器やインソール設計の開発に生かされています。

姿勢矯正や腰痛防止のためにオーダーメイドのインソールを作る人も増えています。個人の癖や好みに合わせたインソールは、今後ますます需要が増えると予想されます。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

スポーツパフォーマンス改善

サッカーで発生しやすいスポーツ障害「第5中足骨骨折」では、足圧中心の測定が、危険因子の評価や予防策の検討材料として有用だとされています。サッカー選手の足圧中心測定結果をもとにインソールを開発できれば、ケガ発生を抑制できるようになります。

ゴルフでは、スイング中の足圧中心軌跡を測定することが有効です。ゴルファーは、測定結果を分析することで自身にとってヘッドスピードを最大化できるフォームを見つけられます。

3軸、6軸力覚センサーが計測できる状態量

関連資料

3軸力覚の面内分布測定

摩擦・せん断力センサーの
製品カタログ/用途別事例集

▶︎ 資料をダウンロードする

測定方法

足圧中心の測定には「重心動揺計」「感圧シート」の2種類が主に使われています。
機器に内蔵されたフォースセンサーが、足と接触面の間の圧力を電気信号の変化として多点で計測します。フォースセンサーの計測結果をもとに、時間・場所ごとの圧力とその中心座標を算出します。
計測した圧力の合力の作用点を算出することで、足圧中心が求められます。

重心動揺計の使用

重心動揺計が臨床検査のための機器としてJIS規格が認められたのは1987年です。現在でも重心動揺計は使われていますが、測定できる姿勢や動作が限られており、自然な状態での測定が難しいという短所があります。

重心動揺計は大きく分けて測定部と制御部に分かれています。荷重の重心位置を求めるために、重心動揺計の測定部は最低3つの荷重センサーを内蔵しています。荷重センサーには、ロードセルや歪みゲージが使われていることが多いです。制御部のコンピューターが、足圧中心座標を算出し、値を記録します。足圧中心座標の算出法はメーカーによって異なります。

感圧シートの使用

重心動揺計は今でも医療目的で使われていますが、日常動作における足圧中心の軌跡を調べるには感圧シートを利用した足圧中心測定装置の方が優れています。感圧シートの動作原理は、抵抗歪み型やピエゾ抵抗型、静電容量型などがあります。

重心動揺計と比較して感圧センサーは測定環境の自由度が上がりますが、耐久性は重心動揺計に比べて劣ります。

測定上の課題

感圧シートだけでは水平方向にかかる力の測定は困難でした。スポーツ中の怪我の発生要因を正確に特定するためには、あらゆる方向にかかる力の測定が必要です。せん断力を測れなければ、怪我の原因を突き止めることが難しくなります。

三次元的な動きを知るために、モーションキャプチャと組み合わせたり、微細加工した3軸力センサーを複数使用するような新システムが開発されたりしています。

せん断方向(XY)の力も同時測定できる摩擦・せん断力センサー

※ 本製品は医療機器ではありません

 

摩擦・せん断力センサーを活用することで、足圧中心だけではなく、足裏にかかる摩擦力の向きと強さをマッピングできます。

◾️測定における摩擦・せん断力センサーの利点
せん断センサーを用いることによる利点をご紹介します。
 
3軸の力の分布を測定
圧力(Z)の測定による足圧中心情報に加え、摩擦せん断力(XY)の面内分布を測定することができます。せん断力(XY)の力から、蹴り出し方向や足の回転を同時に可視化することができるようになります。摩擦・せん断センサーにより足圧中心の情報だけではわからない体の動きをとらえることに繋がります。
 
その場ですぐ測定可能、シート状で持ち運びが容易
センサー部分はフィルムシート状のため、曲げることができ軽くて持ち運びが便利です。またセンサー・コントローラー・Viewerソフトをセットでご提供できますので、PCに繋いで簡単に測定することができます。
 
ご興味を持っていただけた方は、まずは一度お気軽にご相談ください。

6軸力覚センサーが採用されるロボットの種類

関連記事

フォースプレートを補完するシート状3分力測定システムの提案|軽量・柔軟・簡単に持ち運び可能
フォースプレートを用いた床反力の測定は、スポーツ科学やリハビリテーションの分野で30年以上前から用い ... もっと見る

フォースプレートを補完するシート状3分力測定システムの提案|軽量・柔軟・簡単に持ち運び可能

ロボットアームに役立つ6軸力覚センサー特徴や3軸との比較を解説
製造業界では、人手不足や生産効率向上の観点から、今まで人間が担っていた手作業をロボットアームに代替さ ... もっと見る

ロボットアームに役立つ6軸力覚センサー特徴や3軸との比較を解説

モーメントセンサーとしての摩擦・せん断力センサーの活用
モーメントとは、ある点を中心に物体を回転させるはたらきの大きさのことを指します。 「力の大きさ」×「 ... もっと見る

モーメントセンサーとしての摩擦・せん断力センサーの活用

ロボットの滑り覚測定に活用できるNISSHAの摩擦・せん断センサー
滑り覚とは、物体同士の位置変化が生じる際の速度や量を表します。滑り覚の研究は、ロボット開発の分野で重 ... もっと見る

ロボットの滑り覚測定に活用できるNISSHAの摩擦・せん断センサー

把持力とは?把持力測定を活用した研究開発事例を紹介
NISSHAでは、把持力の測定に活用できる摩擦・せん断力センサーを開発しています。この記事では、把持 ... もっと見る

把持力とは?把持力測定を活用した研究開発事例を紹介

協働ロボットとは?特徴や産業用ロボットとの違いを解説
協働ロボットとは、人間と同じ空間で協働作業ができるロボットのことを指します。 消費者の趣味趣向は年々 ... もっと見る

協働ロボットとは?特徴や産業用ロボットとの違いを解説

バラ積みピッキングの自動化に貢献できるNISSHAの摩擦せん断力センサー
生産効率を上げる上で欠かせない自動化工程の一つとして、製品のピッキング作業が挙げられます。特に、バラ ... もっと見る

バラ積みピッキングの自動化に貢献できるNISSHAの摩擦せん断力センサー

触覚のメカニズムとは?圧力や凹凸、温度を感じる仕組みを解説
「触覚」はその名のとおり、ものを「触った」際に生じる感覚です。 水を触ったときに冷たさを感じたり、針 ... もっと見る

触覚のメカニズムとは?圧力や凹凸、温度を感じる仕組みを解説

座圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~
座圧測定をする際には、一般的に垂直方向の力を測定できるセンサーを使用します。一方で、NISSHAは座 ... もっと見る

座圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~

足圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~
NISSHAの開発している摩擦・せん断力センサーは足圧の測定に活用できます。一般的に足圧を測定する際 ... もっと見る

足圧センサーとしての用途や活用方法を解説 ~NISSHAの摩擦・せん断力センサー~

急速に開発が進むソフトロボティクス 取り組み事例や課題を解説
「ロボット」と聞くと硬い金属でできたイメージを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。 硬い材質の ... もっと見る

急速に開発が進むソフトロボティクス 取り組み事例や課題を解説

カメラを活用したロボットハンド制御 メリットデメリットを解説
産業用ロボットや搬送用ロボットなど、製品を取り扱うロボットには必ずと言っていいほど「ロボットハンド」 ... もっと見る

カメラを活用したロボットハンド制御 メリットデメリットを解説

人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説
5Gなどの通信技術の向上と共に、ロボットの遠隔操作のように「自分の体と同調させて操作をする」技術や、 ... もっと見る

人間が感じる触覚の評価指標と計測デバイスについて解説

遠隔操作、自動化できる工程を触覚センサーによって拡大可能に
ロボットの遠隔操作技術の進歩によって、これまで人間がやっていた作業をロボットが実施できるようになって ... もっと見る

遠隔操作、自動化できる工程を触覚センサーによって拡大可能に

摩擦・せん断力センサーを応用した入力インターフェース
NISSHAの摩擦・せん断力センサーは、「ねじる、こする、弾く」などの多様な入力を可能にする力覚検知 ... もっと見る

摩擦・せん断力センサーを応用した入力インターフェース

ロボットハンドに使われるセンサーとは? トルクセンサーなど代表的な力覚、触覚センサーを解説
指先を使って作業をするとき、人間はさまざまな感覚を使いながら動きをコントロールしています。同じような ... もっと見る

ロボットハンドに使われるセンサーとは? トルクセンサーなど代表的な力覚、触覚センサーを解説

正確な力を測るのに欠かせない! 力覚センサーに求められる特性や種類を解説!
力覚センサーは複合的に作用している力の状態を計測できるセンサーです。臨機応変な対応が求められる高度な ... もっと見る

正確な力を測るのに欠かせない! 力覚センサーに求められる特性や種類を解説!

ロボットの進化に必須! 触覚センサーの種類と原理を解説
工場などで使われている従来のロボットには、あらかじめ決められた動きやルールに従って動作する位置制御が ... もっと見る

ロボットの進化に必須! 触覚センサーの種類と原理を解説

タクタイルとは? 心地いい使用感や直感的な操作にかかせない性質
私たちの身の回りには多くの入力インターフェース(機械と人間とをつなぐ接点)があります。これらを操作す ... もっと見る

タクタイルとは? 心地いい使用感や直感的な操作にかかせない性質

摩擦力、せん断力の面内分布を測定可能!さまざまな製品の研究開発に応用できます
製造業の研究開発部門では、摩擦力、せん断力を測定したいというニーズがあります。ロードセルのように、1 ... もっと見る

摩擦力、せん断力の面内分布を測定可能!さまざまな製品の研究開発に応用できます

ロボットハンドの種類と特徴を解説、さらなる高性能化を考察
ロボットは生産、加工現場だけでなく、医療、福祉などさまざまな場面で活用されています。ロボットに求める ... もっと見る

ロボットハンドの種類と特徴を解説、さらなる高性能化を考察

面圧の測定方法とセンシングデバイスを紹介
製造業の研究、開発現場ではさまざまな特性値を測定して、技術ノウハウを蓄積しています。面圧は、摩擦力を ... もっと見る

面圧の測定方法とセンシングデバイスを紹介

注目される食品工場でのロボット利用 活用事例と導入課題の解決策を解説
食品工場では、少子高齢化の進行による人手不足対策や生産性向上、作業者の負担軽減を目的として、ロボット ... もっと見る

注目される食品工場でのロボット利用 活用事例と導入課題の解決策を解説

開発と実用化が進むxR-仮想世界で活躍するインターフェース技術を紹介
現実とデジタル情報を融合させるxR(xReality)技術は、近年、開発と実用化が進んできました。 ... もっと見る

開発と実用化が進むxR-仮想世界で活躍するインターフェース技術を紹介

摩擦力・せん断力とは-NISSHAの摩擦・せん断力センサー技術
物体と物体が接触して動く際、その接触面には摩擦力が生じます。ネジ、ベアリング、衣服、靴、オイル……。 ... もっと見る

摩擦力・せん断力とは-NISSHAの摩擦・せん断力センサー技術

ユーザーインターフェースとは ―入力装置の今とこれからをまとめてみる
人が機械との間で情報伝達を行うユーザーインターフェースには、マウスやキーボードなど様々な種類がありま ... もっと見る

ユーザーインターフェースとは ―入力装置の今とこれからをまとめてみる

ロボットに新たな感覚を付与する、NISSHAの触覚センサー
指で押し込んだ時に感じる物の弾力。手を横に滑らせたときに感じる、ひっかかるようなザラザラとした表面の ... もっと見る

ロボットに新たな感覚を付与する、NISSHAの触覚センサー

見積り依頼/技術に関する相談

フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください

CLICK