生産効率を上げる上で欠かせない自動化工程の一つとして、製品のピッキング作業が挙げられます。特に、バラ積みの製品を自動でピッキングすることは難しく、実現するためにさまざまな技術が導入されています。
今回はバラ積みピッキングの概要や自動化する難しさ、バラ積みピッキングロボットの実現に必要な技術について解説します。
Contents
バラ積みピッキングとは箱の中にバラバラに積まれているワークを持ち上げる動作のことを言います。箱の中に無造作に入れられたワークはそれぞれ異なる方向を向いているため、整列したワークをピッキングするよりもはるかに難しくなります。一方で、ワークを整列し直す作業やスペースは不要になるため、生産効率は大幅に向上します。
そこで、ロボットに搭載されるカメラの画像認識技術や、ピッキングをする際の把持・吸着技術が向上したことで、製造工程にバラ積みピッキングロボットを導入する動きが進められています。
バラ積みピッキングロボットを導入することで、 人手不足の解消や段取り時間の短縮といったメリットが得られます。
バラ積みワークのピッキングは手作業で行われることがほとんどで、製品点数が多い場合は複数人で作業しなければならず、生産効率を上げるためには人員を増やすといった対応が必要でした。
バラ積みピッキングの工程を自動化することで、人手を補完し、これまでピッキング作業に当てていた人員を技術開発などのより付加価値の高い業務に割り当てることも可能です。少子高齢化が進み、人材確保が難しい状況において、こうした不足の解消は大きなメリットとなります。
また、騒音環境下や暑熱環境下、重量物作業などの場合には、ロボットが作業を代替することで作業者の労働負荷低減も実現できます。
ワークを事前に整列させる方式の工程では、部品種類ごとに段取り替えをしたりする必要がありました。 一方、バラ積みピッキングを採用した工程ではワークを事前に並べる必要はありません。また複数種類のワークが混載された状態で作業を行う場合もあります。
バラ積みピッキングロボットの中には、高度なカメラ画像処理技術により、複数種類のワークを判別できるものもあります。ロボットが作業を行うための事前準備が必要なく、段取り時間を短縮することで、生産効率の向上を実現できます。
関連資料
3軸力覚の面内分布測定
摩擦・せん断力センサーの製品カタログ/用途別事例集
▶︎ 資料をダウンロードする
バラ積みピッキングロボットは、ロボットアーム、ワークを掴むロボットハンド、ワークを認識するカメラによって構成されます。技術的な要素としては、ワークの認識やワークの把持・吸着といった技術が必要とされます。
ワークを正しくピッキングをするためには、バラ積みされた複数種のワークの中からピッキングしたい対象物を見分け、そのワークの向きを正確に把握する必要があります。
多くのピッキングロボットはアーム部分に取り付けられたカメラでワークを撮影し、AIなどを用いてリアルタイムで画像処理を行うことで物体の位置情報を把握しています。カメラには3Dカメラが使われる場合もあります。
物体の位置や向きを認識した後は、そのワークを正確に把持・吸着する必要があります。
掴み方は大きく分けて2種類あります。 一つは人間の手のように把持するタイプ、もう一つはエアーなどをつかった吸着するタイプです。どのような方法を取るかはワークの材質や形状、重さによって変わってきます。
ピッキングの際はワークを落としたり、傷つけたりしないように微妙な力加減を制御することが求められ、高精度のバラ積みピッキングを実現するためには複雑な制御が必要になってきます。
NISSHAはフィルム型摩擦・せん断力センサーを開発しています。 このフィルム型摩擦・せん断力センサーは、垂直方向の力に加え横方向の摩擦力も計測できるため、ワークを掴む精度の向上が可能です。 また、センサーはフィルム状であり、ロボットハンドへの搭載に適しています。
このセンサーを活用できる具体的なシーンを、2つ紹介します。
カメラだけでワークの向きを正確に認識するには、いまだいくつかの課題があります。たとえば金属光沢の強いワークに対してカメラの撮像データはバラツキが大きくなる傾向があることなどが挙げられます。このような誤認識によってワークを斜めに掴んでしまうといったハンド把持位置のミスマッチが生じる場合があります。 このミスマッチが発生すると搬送時にワークが落下したり、次工程への投入角度を間違えるなど、生産を一時的または長時間にわたり停止させてしまう「チョコ停、ドカ停」の原因になりかねません。
NISSHAのフィルム型摩擦・せん断力センサーは、このようなハンド把持位置のミスマッチの検出への活用が期待できます。
ロボットハンドとワークの接触部で検出される摩擦力の方向は、把持位置が正しい場合とミスマッチしている場合とでずれが生じます。この摩擦方向のずれを検出することで、ワークを掴み直す必要があるのかどうかの判断ができると考えます。
カメラの画像認識によりワークの形状や向きを把握する場面においても摩擦・せん断力センサーを活用できます。 たとえば、カメラの画像認識では大まかな把持位置を特定し、ワークを把持する際には摩擦・せん断力センサーでハンドとワーク界面の摩擦力を検出して把持位置の微調整を行うといったシステムを構築することができるかもしれません。
画像処理は、要求する精度が高くなればなるほどシステム開発に時間とコストが掛かってしまいます。摩擦・せん断力センサーは把持システムの効率的な開発に貢献します。
これまで紹介してきた画像認識などの課題から、現在開発されているバラ積みピッキングロボットの中にはワークの形状によってハンドを付け替えなければならないものも有ります。そこで摩擦・せん断力センサーを使ってハンド/ワーク間の摩擦データを取得することで、画像認識のバラツキがより正確に補正され、さまざまなワークに対応できるロボットハンドを開発することができるかもしれません。
このように、NISSHAの摩擦せん断力センサーを用いれば、バラ積みピッキングロボットのシステムコスト低減や性能向上を実現できる可能性があります。興味を持って頂けた場合には、ぜひ一度お問い合わせください。
こんな記事も用意しています。
ロボットに新たな感覚を付与する、NISSHAの触覚センサー
ロボットハンドの種類と特徴を解説 さらなる高性能化を考察
注目される食品工場でのロボット利用 活用事例と導入課題の解決策を解説
フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください