製造業の研究、開発現場ではさまざまな特性値を測定して、技術ノウハウを蓄積しています。面圧は、摩擦力を推定するための重要な機械特性値です。今回は、面圧を測定する方法と原理、その活用事例を紹介します。
また、面圧、摩擦力、せん断力を同時に測定可能なデバイスと、そのメリットも紹介します。
Contents
面圧とは、単位面積当たりの荷重です。荷重とは物体に作用する力で、単位を[N]で表します。
面圧は、力÷面積で求められ、単位は[Pa]または[N/m2]で表します。
さまざまな場面で面圧測定が活用されています。いくつか事例を紹介します。
半導体の基板材料であるシリコンウエハーは、何層にも重ねるため平らであることが求められます。シリコンウエハーの表面を研磨する工程をCMPといい、研磨パッドで圧力をかけ、回転して研磨します。研磨品質を維持するために、研磨パッドの面圧を測定します。
研磨による仕上がりの表面性状をよくするために、均一に砥石の圧力がかかっているか測定することもあります。
印刷機は、スクリーン印刷やオフセット印刷、電子写真方式のデジタル印刷など、さまざまなタイプがあります。どの印刷機にも、面圧を管理するポイントがあります。
印刷機の紙送り機構ではローラーやベルトが紙を挟んで搬送します。また、紙転写部、熱定着部では、ローラーなどで圧力をかけて、転写や熱定着を行います。
紙搬送ローラーにかかる圧力が均一でない場合、うまく紙を送れません。また、転写ローラーや定着ローラーにかかる圧力が均一でない場合、転写や定着にムラが発生し、品質不良につながります
印刷機にとって、安定した紙搬送や、質の良い画像を出力することはとても大切な機能です。そのため、重要特性値として面圧を管理しています。
また、スクリーン印刷では、スキージというヘラのようなものでインクを押し付ける機構があります。押し付ける圧力が一定でないと、インクの塗膜ムラなど、画像品質の問題が発生するため面圧測定し管理しています。
ロボットが物をつかんだときに、指先にかかる面圧を測定して値をフィードバックし、把持力を制御しています。
ギヤの歯と歯がかみあう歯面にかかる圧力や、軸受けが軸から受ける面圧は、重要な設計パラメータです。面圧が高いと摩耗が発生しやすくなるため、部品の寿命に関わります。面圧を測定して、寿命に問題がないように管理をすることがあります。
地面に対する圧力分布を測定して、タイヤ形状開発に活かしています。
ペンタブレットは板状の入力インターフェースです。パソコンに接続して、タブレットの表面をペンで押したり、なぞったりして動作を入力します。ペンタブレットにかかる面圧を測定し、筆圧やペン位置の検知に活用しています。
体圧とは、体にかかっている圧力のことです。面圧センサーを敷布団に設置して、体の圧力分布を測定します。 寝たきりの方などは、同じ態勢でいると床ずれ(褥瘡)という皮膚の障害につながります。体圧をモニターして面圧が長時間集中しないように処置します。長く面圧がかかっているときには、態勢をかえたり、クッションを挟んで圧力を分散させるなどのケアをします。
靴のソールに面圧センサーをつけて足にかかる圧力測定をします。足を怪我した人のリハビリに活用されていて、健常者との面圧分布の違いから正常かどうか判断できます。
椅子に敷いて、座っている部分の圧力測定もできます。椅子の開発などに活用できます。
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さまざまな場面で面圧が測定されていることを紹介しました。ここからは、主な面圧測定センサーと特徴を紹介します。
感圧シートは、感圧紙ともいわれ、面圧とその分布を測定できるシートです。シート全体に感圧インクがコーティングされていて、面全体の面圧分布を一目で確認できます。
感圧インクは、圧力を受けると赤く発色、発色濃度は大きさに応じて変化します。低い圧力から高い圧力まで測定可能なように、高圧用や低圧用のシートがあります。
感圧シートは、はさみなどで自由な形状に切って使えます。そのため、大小を問わずさまざまな大きさに対応が可能です。 一方で、力の入れ具合によっては手で持っただけでも変色する場合があることや、1回しか使用できないといったハンドリング性については注意が必要です。
また、感圧シートは圧力のピーク値のみを記録します。リアルタイムな圧力変化を測定したい場合は、次に紹介する面圧センサーシートのような測定機器を使う必要があります。
面圧センサーシートは、0.1㎜程度のシート型センサーです。センサーの形状や大きさは調整可能で、布団くらいの大きさにもできます。また、測定圧力範囲や、感度をカスタマイズ可能で、200℃程度の高温でも使用できます。
リアルタイム測定が可能で、3k[Hz]程度のサンプリング周波数でデータ取得できます。
感圧シートは、ピーク値のみですが、面圧センサーシートはリアルタイムに面圧の時間変化を測定可能です。また、感圧シートは一度使ったら交換が必要ですが、面圧センサーシートは何度でも使えます。
面圧センサーシートは、工程の特性値調整や保証に活用できます。
例えば、面圧偏差を調整するために、面圧をリアルタイム測定しながら部品のギャップ調整や、加圧スプリング調整などをできます。
抵抗膜方式の面圧センサーシートは、電気抵抗を荷重に換算して測定しています。
センサーシートは、2枚のシートを貼り合わせた2層で構成されています。それぞれのシートには、電極が一定の間隔で平行に配置されています。2枚のシートを貼り合わせるときに、90℃回転させて向きをずらすことで、電極の配置が格子状になります。格子状電極の各交点が測定箇所となります。
電極は感圧導電性のインクを使用します。荷重がかかっていないときは、上下の電極が軽く触れているだけなので、電気が流れにくく抵抗が高いです。
抵抗膜方式の面圧センサーシートは、インクの特性を調整することで、荷重の測定範囲や感度を調整できます。
抵抗膜方式以外の面圧センサーシートとして、静電容量方式があります。わずかに離れた2枚の膜の間の静電容量の変化を面圧に換算して測定する方法です。
NISSHAの摩擦力、せん断力センサーは、面圧だけでなく、摩擦力とせん断力も測定できるセンサーシートです。多点測定できるため、面圧、摩擦力、せん断力ともに面内分布を可視化できます。
センサーシートは、X,Y,Zの3軸の荷重を測定でき、力がかかる方向に応じて、プラスとマイナスの値で計測されます。シートの厚さは1㎜以下で、容易に変形し、大きさも自由にカスタマイズ生産可能です。
パソコンに接続して計測可能なセンサーセットで、持ち運び、設置に手間がかかりません。
匠の技や技術ノウハウの数値化および、伝承やコーチング
これまで、経験則から積み上げてきている技術ノウハウを特性値測定することで数値化できます。また、熟練の匠の技術を数値化し、技術を伝承、自動化したり、育成の際に数値でフィードバックしてコーチングできます。 例えば、タイヤや靴など、面圧だけでなく摩擦力の分布を数値化して最適な形状に設計可能です。また、ロボットハンドに適用して、熟練の技術者にしかできない作業を特性値解析し、自動化につなげられます。
工程での歩留まり向上、生産性向上
印刷機の紙搬送部や駆動部では、スリップなどの不具合を防止しなければなりません。 面圧だけでなく摩擦力の分布を測定することで、出来上がりの機能を数値で管理できます。 従来は、装置全体を完成させて、電源を入れて動作させないと不具合検知できませんでした。しかし、ユニットの状態で面圧や摩擦力を管理して調整することで手戻りを減らし、生産性を向上できます。
NISSHAは、面圧、摩擦力を測定可能なデバイスをお客様に提供できます。大きさや測定荷重範囲など、ニーズに合わせてカスタマイズ可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。
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